■アフリカ・サッカーを考える(オリンピック決勝から) 2000.10.4


オリンピック前から、優勝はアフリカ勢だろうと思っていた。前回はナイジェリア、そして今回はカメルーン。1982年のワールドカップ開幕戦で、カメルーンがアルゼンチンを破って、最初の「カメルーン旋風」を巻き起こして以来、私はずっとアフリカ勢を注目してきた。ワールドカップ・レヴェルで見ても、身体能力は抜きん出ている。これに戦術と組織プレイが加われば、まさに無敵のサッカー・チームとなるだろうと思ったものだ。

サッカーは、周知のように組織でプレイするスポーツだ。そのため、個人の実力や能力が非常に目立ちにくい。言い換えれば、チームに一人だけ上手い選手がいても、逆に一人だけ下手な選手がいてもあまり目立たない。さらに別の言い方をすれば、ペレやクライフ、ベッケンバウアー、ジーコ、プラティニ、マラドーナといったスーパースターが、クラブ・チームや代表チームの中であれだけ目立った活躍をするということが、能力的にどれだけ突出していたかを窺い知る材料となると思う。

アフリカ勢の身体能力を見てみると、チームの平均値が恐ろしく高い。チームがどれだけ劣勢に立とうとも、個人の能力でどうにか挽回できるのである。技術的にはどうだろうか? これはヤバい。どうヤバいか? ワールドカップ・レヴェルでいけば、下手といっていいくらいだと思う。パスは不正確。トラップはデカい。ドリブルはかなりジタバタ。こういった要因を身体能力だけでカヴァーして、世界レヴェルまで登ってきたのだ。

もう一つ、特筆すべきは気分屋だということ。気分の波の上下が激しく、日によってころころ変わる。前の試合で素晴らしいパフォーマンスを見せていたかと思うと、次の試合では絶対的に勝てる試合を落したりする。チームとしてモチベーションを維持することが難しそうだ。前回のフランス・ワールドカップでの優勝最有力候補は、ナイジェリアだと思っていた。しかし、絶対優勝だろう! という試合をしたかと思えば、ガックリくるような内容で試合を落したりして、結局は優勝から程遠いところで敗退した。

今回の決勝戦を見てみると、ヨーロッパ・サッカーとの差が歴然とする。

スペインはディフェンス・ラインの組織だった動き、ボランチを中心に中盤より前から相手の攻撃にきちんとプレッシャーをかける。攻撃は、中盤からダイレクト・パスを含めて繋ぎ、サイドから崩すパターンを多用する。(哀しいことに、決勝での得点はちょっと違ったパターンであったが)

対するカメルーン。前半は中盤でも前線でも彼ららしくない? パス回しから攻撃を組み立てていた。守備はスリー・バックではあるが、完全に個人対応で組織的プレイやカバーリングは見られなかった。危ない場面ではボランチが下がってきて、フォー・バックスかファイヴ・バックスのように見えるときすらあった。彼らの守備を見ていると、一対一では非常に強い。普通ならスライディングしなければ届かないような場合でも、あまり苦しそうには見えない程度に足を伸ばせば届いていしまう。スルーパスが通っても、相手と同時かそれよりも速くボールに追いつき、容易にはセンタリングが上がらない。得点を入れられてしまった場面を思い起こすと、選手同士の意思の疎通がなくなり、ラインがバラバラになり(決して崩されたわけではない)、そこへ隙を突いて効果的なスルーパスが出る……という形でやられている。

一方攻撃では、後半に入ると「らしくないパス回し」を止めて、ドリブルによる突破が目立つようになってくる。特にこれといったフェイントがあるわけではないが、縦への突破で見せるスピードには唖然となる。また、どう見ても苦し紛れとしか思えないパスが通る。彼らが持つ独特のリズム感であるとかゲーム感覚が、他の民族の理解を遥かに超えたところにあって、思いもよらぬ攻撃パターンの展開になるのだろう。二点目の時に見せたエムボマのセンタリングにしても、彼が中を見ていたようには思えない。本能的に出したパスに、周りが本能で応えたという感じがピッタリだ。

それにしても驚くのは、本能で出されたパスに気付いてから反応し、しっかりと追いつける速さと、一瞬の場面に見せるプレイの正確さだ。この正確さは、極限状態の体勢、トップスピードの中でのボール・コントロールを指す。決して流れるようなプレイではないのだが、確実にトラップし確実にコントロールし確実に決める。ボール・コントロールというよりはボディ・コントロールの素晴らしさが際立つ瞬間でもある。

もう一つ目に付いたのは、カメルーン選手が地面を蹴る力の強さだ。試合中、何度もバランスを崩して倒れそうになるシーンがあった。ダッシュに移る一歩目や反転するときの軸足の滑りがほとんであった。これはちゃんと足が掛かれば、ごく短い時間(おそらく二歩か三歩)でトップスピードに乗ることができ、トップスピードから一蹴りで反転することができることを意味する。

何はともあれ、これだけの身体能力と独特の感覚があるのだから、これからは良い指導者探しということに力を入れてもらいたい。かのフィリップ・トルシエも日本代表監督の前は南アフリカの監督として、僅かな期間で南アフリカをアフリカ大陸の強豪チームに育て上げた。ナイジェリアやカメルーンにヨハン・クライフやフランツ・ベッケンバウアーなんていう、優勝請負監督が就任すれば……などというバカな妄想をしてみたりする。

次のワールドカップ、日本では是非是非アフリカ勢にジュール・リメ杯を取って欲しい。私のアフリカ贔屓はまだまだ続く。


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