バス・フィッシングの理論と実践 第三回 2001.7.9
牛久沼における特殊な状況
ここでは、牛久沼での特殊な現象や変化にバスがどのような反応を見せるかを説明する。前章までに水温変化によるバスの釣れ方については極力触れずにきた。また、アオコについてもあまり詳しく触れていない。この章でまとめて説明することにする。
1.水温の変化とバスの付き場の関係
季節によるバスの動きは、前章までに説明した。その動きに絡んで水温の変化がバスの活性の上下や付き場の変化に影響を及ぼす。特に季節の変わり目は、どちらのパターンに絞り込むかで釣果がまったく違ってくる。牛久沼の場合、バスは水温10℃を超えると5℃ごとに規則的なパターンで動くようになる。
・10℃以下:完全に真冬の水温で、バスは1日のほとんどをまったく動くことなく過ごす。日中の限られた時間に決まってエサを捕るようになるが、全体的には極めて活性の低い、釣り難い水温域だ。
・10〜15℃:バスにとっては非常に微妙な水温だ。活発に動き回るにはやや水温が足りないが、完全に沈黙してしまうまでには至らないといったところだろうか。この水温域は、年間に度やってくるが、春と秋とでは、その意味するところはまったく違う。春はスポーニングの準備に入り、シャローを意識し始める。気温が上昇していくにつれてバスの居場所は徐々にシャローに寄っていく。秋は、逆にバスは沖の漁礁や杭回り、ブレイクを意識し出す。水温が下がるにつれて徐々に深いところに集まっていく。
・15〜20℃:バスにとって最も活動しやすい水温域になる。活発にエサを捕り、行動範囲も広くなり、結果として湖全域に広く散ってしまう。春は水温の上昇とともにアシぎわに徐々に集まり出す。夏を意識するのだ。秋は水温が下がるにつれて湖全域へ散っていく。ここでも春と秋の意味するところは違う。春は産卵から体力を回復するため、湖全域で活発にエサを追っていたバスが夏を意識して再びシャローのアシぎわに集まってく。秋は夏の暑さから解放されたバスが冬に備えてエサを捕るために湖全域へ散っていくのだ。
・20℃以上:真夏の水温域で、バスの活性は下がる。朝夕の涼しい時間帯を除いて、バスはアシの中深くに入り込んで動かなくなる。
以上のような水温変化に伴う動きと季節別の動きを組み合わせて、その時バスがどこにいるかを判断していく。いくつかの例を見てみよう。
梅雨入り直前の日差しは、すでに夏のものといっても過言ではないほど強く、水温は急激に上昇しているある日。朝方は春のパターンで通用していたが、日中近くなりアタリが止まってしまった。こんな時水温を計ってみると20℃を超えていることがほとんどで、バスはアシの中に入り込んでしまったのだ。
11月。朝方冷え込み、防寒具無しでは釣りにならないようなある日。日中になって汗ばむほどに暖かくなったところで、ちょっと気分転換のためにアシぎわにバズベイトを投げたら、結構な大物が釣れてしまった。こんな時水温を計ってみると15℃を超えていることがほとんどで、バスはアシぎわで活発にエサをとっていたのだ。
牛久沼は水深がなく、風の影響が大きいため、水温が変化しやすいのだ。また、大物ほどこのような変化に敏感で、付き場所を変える。ブレイク絡みの縦のストラクチャーに居着くバスは、ストラクチャーに沿って上下に移動するから、ルアーの深度を考えて攻めれば攻略できる。
2.夏のアオコ対策
梅雨が明けて1ヶ月近く経過すると、牛久沼には夏の強い日差しと、雨が降らなくなることによってアオコが発生する。アオコの発生は、水中の溶存酸素量を極端に減らすため、バスの活性はガックリと落ちる。アオコの層は平均で10〜20cm、多いところではこの倍の厚さになる。
アオコ発生の前兆は、7月の後半ごろに見られるようになる。バズベイトなどのトップウォーターを引いていると、ルアーの航跡に細かい泡が残るようになるのだ。これはいわゆる「水が死んでいる」とか「水が悪い」などと一般にはいわれている状態だ。このまま日差しが強い日が続けば、間違いなくアオコは発生する。
牛久沼の場合、夏の間は八間堰が閉めっぱなしになっていて、水が動かないことが原因になっている。リザーバー(いわゆる山上のダム湖を指す)のようなフレッシュな水が流れ込むインレット(流れ込み)もないため、一度発生するとなかなか厄介な代物だ。
アオコの発生によって、湖はほぼ沈黙状態に陥る。このような状況で釣れるバスを探すにはコツがいる。最も重要なポイントは、少しでも水が動いているところを探すことだ。水が動く要素としては風、流れ込み、湧き水などがあるが、牛久沼の場合は風と流れ込みで考える。
牛久沼のように遮るもののない湖では、風は水を動かす最大の要因になる。風が当たるアシの中、漁礁、杭回りは必ずチェックすべきスポットだ。流れ込みは、ここでは西谷田川、東谷田川、稲荷川の遥か上流を意味する。川幅5m以下になるほど上流へ行くと、水は動くというより流れている。このような場所では、水は生きているから、普段と変わらぬ釣りができる。しかし、非常に浅く、下流では考えられないほど水が澄んでいるから、接近には注意が必要だ。
そしてもう一つ、ウルトラC級のスポットがある。これは、アオコの発生を良いことだとする逆転の発想から生まれた。本当はあまりにも釣れなかったため、ヤケのヤンパチでやったところ成功した偶然の産物なのだが……。ワンドの中というのは、この時期敬遠されるスポットだ。水が澱み、釣りにならないからだ。しかし、ワンドの中にアオコが吹き寄せられ、アオコを手で掬えるほどブ厚い層を作っているところは、第一級のスポットとなる。つまり、アオコの層がリザーバーでいうゴミ溜りと同じような日陰のスポットを作り出すのだ。この下にはまず確実にバスがいる。
夏のバスが低活性になる原因は、アオコも含めて湖の水質の悪化が原因になっていることはこれで分かった。この時期のバスが釣れるようになるための、最も単純にして明快な答えがある。雨だ。雨が降ることによって、フレッシュで冷たい水が表層に供給されるから、バスは、表層付近に集まってくる。
ねらい目は、第一に雨が降っている最中と直後、第二に夕立など、夕方から夜に掛けて激しく雨が降った翌日の早朝だ。こんな時は、アシぎわやハス畑で狂ったようにトップウォーターにバスが食らいついてくる。
サイズアップと釣果アップのためのヒント
1.アシを制する者、牛久沼を制す
牛久沼はご存知の通り、アシに取り巻かれた湖だ。釣果アップのためには、アシぎわを如何に攻略するかがポイントとなる。
アシぎわでの釣りをタックルの面から考えてみよう。アシぎわでバスは、ルアーを咥えるとアシの中へ向かっていく。それを強引に引き抜くためには、硬く長いロッド、太くて頑丈なラインが必要だ。また、アシの中へのウェッピングを考えればその必要性は理解できると思う。
ロッドは6.5フィート、ミディアム・パワー以上のものがよいだろう。いわゆるピッチング・ロッドやフリッピング・ロッドがそれに当たる。50cm級のバスを、アシの中から宙づりにしたまま手元まで引き寄せることのできるパワーが必要なのだ。
遠くから見れば漠然と続いているように見えるアシ原も、近づいてみるとかなり複雑に入り組んでいることが分かる。壁状になったところ、岬状になったところ、ワンド状になったところ、スキ間が多いところ、密集したところなどが特徴的なところだろうか。延々と続くアシ原を攻略するには、これらの状況の変わり目を集中的に狙っていくことが早道だ。壁状に続いていたところがワンド状にかわるところやスキ間が多いところと密集したところの境目など、回りと違った状態のところを狙うのだ。また、種類の違う植物が沖に向かって層を作っているところは、特に狙い目だ。層と層の境目には、バスが潜り込めるスキ間があり、大物が潜んでいる。さらにこういったスキ間は、意外にもルアーを落とし込みやすい状況になっていることが多く、釣りやすいスポットといえる。
2.周りと違う?!
アシ原攻略のところでも書いたが、周りと違った状況のところを攻めることは、サイズアップと釣果アップの早道だ。直線状に続くところよりは出っ張りや引っ込み、緩やかな変化よりは急激な変化は、よりバスを引き付けるし、こういった変化についているバスの方がアクティブな場合が多いのも事実だ。川幅が大きく変化するところでは、水の動きにも大きな変化が見られる。西谷田川の細見橋上流にある通称「細見広場」は、その典型といえるだろう。細見広場の入口と出口では、水の動きに明確な変化があることは容易に想像できる。2サイクル・エンジンのチャンバーと同じ原理だ。
大きくカーブしているところの内側と外側も、状況としてはかなり違う。内側は岬状になり、沖の方まで浅くなっていて水の動きも緩やかだ。外側は川筋、いわゆるチャンネルが寄ってきているため、ブレイクラインが岸の近くにあり、水の動きも大きくなっている。
もっと近い視点では、壁状に続くアシぎわに倒れたアシが1本でもあれば、それも周りとは違った状況といことになる。トップウォーターやジャークベイトは、たいていこういったところで出る。
周りの人と同じことをしていれば、ほとんどの場合同じ釣果しか望めない。シャローに人が集中してきたら沖に目を向けてみたり、周囲の人とはまったく違ったタイプのルアーを使ってみたりすることは、やはりサイズアップと釣果アップの重要なポイントだ。
ウィード・エリアでよくあることだが、皆がライト・テキサスやダウンショット(常吉)で小物を多く釣り上げているところへ、後からきた人が1/2ozくらいの大型のラバージグで大物を釣り上げる。これは、軽いルアーではボトムに落ちる前に中層で小バスに食われてしまうので、大物がいるボトムまでルアーを送り込めない、といったシチュエーションだ。同様のことは漁礁や杭でも起こる。
皆がアシぎわに集中しているとき、沖の杭回りで超大物が出たり、アシぎわには人がたくさんいるのにハス畑にはまったく人がいないなど、牛久沼でも周りの人と違うことをするチャンスはたくさんある。
3.必殺技でトドメを刺す
プロのトーナメントなどを見ても、ウィニング・ルアーとなっているものは結構意外なものだったり、他の人が見向きもしないスポットで釣っていたりといったことがよくある。意外なウィニング・ルアーは、よく「シークレット」などと呼ばれ、シーズンが終わるころまで明かされず、必殺技として使われるのだ。
必殺技は、多くのルアーを多種多様な方法で使い込むことによって生まれる。必殺技は、経験よりも好奇心や研究する心から生み出される。時にはヤケのヤンパチ状態で投げたルアーがヒントになったりすることもある。とにかく投げ続けることによってのみ必殺技は生まれるのだ。「ローマは一日にしてならず」だ。
私が必殺技として発見したルアーは、ソフト・ジャークベイト、フロッグ、ウィードレス・スプーンだ。ソフト・ジャークベイトをハード・ルアーとして使うことは、フロリダで習得してきた。ガイドに「こんなして使うんだよ」と教えられたのだが、釣れること!釣れること!! 多分私とこの技の相性も良かったのだろうが、自分でも信じられないくらい驚異的なスピードでマスターし、帰るころにはガイドより上手くなっていた。帰国後、早速牛久沼で試してみると、これがまた釣れること!!釣れること!!! これはイケル! ということで必殺技リストに追加した。
フロッグは、完全に「ヤケのヤンパチ」状態からの産物だ。このルアーは、はじめハス畑攻略が目的だった。それはそれで結構な釣果を上げてくれたし、ウィード・エリアやゴミ溜りでも同様の効果を上げた。しかし、必殺技リストに登録する決定的な事件は、ある夏の暑い日に起きた。昼を過ぎた最も暑い時間帯、何をやっても釣れない状況がやってきた。暑さと釣れないことが重なって半狂乱になった私は、やおらフロッグをフリッピング・ロッドにつけてアシの中へキャストしたのだ。フロッグは、数こそ期待できないが、確実に大物キラーとして使えるルアーだ。
ウィードレス・スプーンは、研究心が生み出したものだ。前にも書いた通り、はじめはマス釣り用に使うことが目的であった。芦ノ湖などで使用していたのだが、その動きは絶妙で「バスにも通用するのではないか」と思い、早速牛久沼での実験に入った。しかし、予想に反して釣果はたいしたことがなかった。杭や橋桁に沿って落とし込んでみたり、ワームをトレーラーとして付けて引いてみたりしたが、どうも良くない。最後にラバー・スカート(一方方向にラバーが向いているもの)を試して完成だ。これはラバージグとスピナーベイトがヒントとなっている。
さいごに
以上が割りと長めの私の釣り経験のまとめだ。一応、牛久沼が手っ取り早く行ける釣り場なので、例にしているが、基本的な考え方はもちろん他の湖でも十分通用する……と思う。これを読んで釣りをしてみたくなったとか、釣果がアップしたなんていう人が出てくれば、非常に幸いだ。
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