Lancia


おそらく、このランチアほどラリーと共に歩んできた自動車メイカーもないだろう。

往年のフルビア、スーパーカー・ブーム真っ只中に発表され、まったくラリーカーらしくない容貌が話題を呼んだ名車ストラトス。グループBの先駆けラリー037、悲劇のモンスターであるデルタS4。連続して年間タイトルを総なめにした栄光のデルタ4DW。どの車も、非常に斬新なアイディアを盛り込まれ、発表当時は誰もが驚いた。

特にストラトスの登場は、衝撃的だった。こんなカッコの車では、絶対にラリーに勝てないとまでいわれたのだが、結果は知ってのとおりだ。ましてや、その後80年代後半に訪れるミッドシップ4WDの先駆けてきな発想がすでに70年代に盛り込まれていたのだ。

これらの車には、すべて「HF」という文字と疾走するアフリカ象の絵が車体に刻まれている。HFは、世界ラリー選手権公認取得済みを表し、像はもちろんサファリ・ラリーがイメージだ。これは、ランチアがラリーに対して並々ならぬ意欲とプライドを持っていることを主張しており、また、長い歴史の中でそれだけの実績を残してきている。

残念ながら、デルタ4WDで6年連続年間タイトルを獲得した後、ラリー界から半ば引退? のような形になっている。今後の復帰の予定は定かではないが、ランチア・ファンとしては、一日も早い復帰を願って止まない。

ラリーを始める前から、ランチアは憧れの的だった。スーパーカー・ブームを体験している世代としては当然のことなのだが、当時あちこちで開かれていた「スーパーカー・ショウ」にカメラを父から借りてハシゴしたことを記憶している。当時の写真を見てみると、私がカメラに収めたのは、ランチアとフェラーリばかりだった。

ストラトスの洗練されたスタイリングは、現在でも十分に通用するだろう。その後継者であるラリー037も、まさに追求され尽くした「機能美」を備えている。写真は、1986年のモンテカルロ・ラリーを走るデルタS4だが、このデルタS4は、ラリー・ヴァージョンしかカッコ良くない。あまりにも速さを追求したために、ボディのデザインは忘れ去られてしまったのだ。ターボ+スーパーチャージャーで480馬力とも言われた、ミッドシップ4WDのモンスターだ。

その後のデルタ4WDは、改良(「エヴォルツィオーネ」進化という言葉を使う)に改良を重ねて、10年近くも続いたシリーズであるが、最終型はブリスター・フェンダー、冷却などの補機類で膨らんだボンネット、屋根の後端に取り付けられたスポラーなどで、建て増しをし続けた家のようにゴテゴテだが、走るための機能美は失っていない。

以前、友人の所有するデルタ4WDを運転したことがある。イタリア車特有の「生き物」的感覚というのだろうか? それを非常に強く感じた。低速ではあまりこちらの言うことを聞いてくれない感じなのだが、いざアクセルを踏み込むと、まったく違った車を運転しているような感覚に陥るのだ。回転は鋭く伸びるし、ステアリングの応答性もメチャクチャに敏感だ。機械という感じがしないのだ。ポルシェのようないかにも機械というマシンとは違い、「生の部分での一体感」を車と共有できる幸せがある。

生産台数が200台などという極端に少なかったグループBカーだったラリー037やデルタS4、既にクラッシクカーの部類に入ってしまうストラトスは、価格だけでなくメインテナンスの面を考えても手が出ないが、デルタ4WDなら、そろそろお手ごろ価格まで落ち着いてきている。是非乗ってみたい車の一台だ。


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