Chute


KONAというメイカーはアメリカ製マウンテンバイク隆盛の中にあって、新興勢力であるカナダ製である。カナダは独自の「バイク文化」とも呼べるものがあって、アメリカやヨーロッパとは一線を画している。特にバンクーバー周辺は、年間降雨量が多く、地面は常に湿ってスリッピーな状態にある。こうした環境の中、森林の中に岩やハシゴを利用した天然のトライアル・コースを作って「下り」を楽しむのだ。このような地域を「ノース・ショア」と呼び、特別なバイク文化圏を形作っている。

アメリカやヨーロッパなどのいわゆる「D系(ダウンヒル、デュアル、デュアル・スラロームなどの総称)」は、車で現地まで乗り付けてゴンドラなどで頂上まで行ったり、直接車で頂上まで乗り付けて下ってくるというものである。これに対してノース・ショア・スタイルは、山に登るところからバイクで行うことだ。したがってチェーン・リングは、通常1枚+チェーン・ガイド(チェーン脱落防止の器具)なのに対して、2枚+チェーン・ガイドとなる。さらに、湿った地面に対応するためにディスク・ブレーキが標準装備となる。

しかし、このノース・ショア・スタイルが注目され始めたのはごく最近のことで、それまでは非常にローカルな遊びの一つとして考えられていた。このスタイルが俄かに注目を集めるようになった背景には、ダウンヒル競技が様々な面で一段落したことが挙げられる。例えばサスペンションやブレーキ、フレーム形状、動力の伝達システムなどといった技術面の進歩がある意味ピークに達したこと。

技術的進歩の頭打ちと同時に、メイカー側が予算縮小などを行い、競技としてのダウンヒル人気に翳りが見え始めたこと。これに伴い、これまでD系の人気を支えてきた多くのライダーがチームを離れてプライヴェート・チームを作らざるを得なくなったり、実質上引退を余儀なくされたりした。こうした状況は、翳りが見え始めた技術進歩のスピードをさらに停滞させるという悪循環に陥ることとなる。

こうした中で、競技としてではなく「遊び」の一環としてD系スポーツを楽しもうという考え方が台頭してきたのは必然だろう。遊びということは、資金的にも個人で楽しむレヴェルであるから、当然これまでゴンドラや車を使っていた登りもバイクで行わなければならない。また、バイクそのものの価格や機材、パーツもそれなりの価格にならなければならない。まだまだ高価なD系バイクだが、このノース・ショア系ブランドから発表されるバイクは、これまでのD系バイクから比べればかなり手に入れやすい価格に抑えられている。

私がChuteを購入したのは、まだD系人気が絶頂の頃だ。したがって写真を見れば分かるが、完璧に下りオンリーのセッティングとなっている。このモデルは1999年だが、2001年モデルのChuteは完全にソース・ショア・スタイルに変更されてしまった。

Chuteを選んだ理由だが。先ずはそのカラーリングの渋さだ。派手ではないが、しっかりと目立つ配色が良い。また、頑強なフレームはまさにハードなコースをハードに攻めるデュアル系競技にピッタリだ。そして最大の理由は「珍しい」ということだ。言い換えれば誰も乗っていないということである。交差点で隣に止まった人が同じ自転車だった……などというのは願い下げにしたい。したがって、車で言えば街中でフェッラーリを見るよりも確率が低いようなバイクが欲しかったのだ。

乗り心地は、極太アルミ・フレームとガセット(補強)などでフレームの撓りは殆どないから、さすがに固い。アルミ・フレームを使ったBMX並である。しかし、サスペンションの威力というのはスゴイ。それまでBMXオンリーでやってきた私にとって、フロントだけのサスペンションでもその乗り心地はまったく違うことが体感できた。これがフルサスだったら……とそのときワクワクしたことを覚えている。

その後度重なる改造を加えて現在の姿に落ち着いたわけだが、まだまだ完璧とはいえない状態だ。金に糸目はつけない! と豪語できるほどのお金持ちなら良いのだが、しがないサラリーマンではなかなかそういうわけにもいかない。

乗る楽しさというのはもちろんのこと、「いじる楽しさ」というのがある。これは幼い頃から、機械系に強い興味を示す男の子特有の楽しみかもしれない。こういったいじる系の趣味は車、カメラ、時計、模型と数え上げたらキリがない。自分でいじって乗って楽しむ。まさに究極の遊びといえよう。


-もどる-